【ICL書籍読書】凄腕ドクターが解説する 眼内コンタクトレンズ(ICL)手術

妻がICLを受けることに

妻が強度の近視のため、ICLを受けることになりました。
自身が手術を受けるわけではありませんが、極度の心配性なので、
ICLの安全性を確認するために以下の書籍を購入し、情報を集めることにしました。

ICLエキスパートインストラクターである、名古屋アイクリニックの小島先生の著書になります。
読書した中で要点を抜粋してまとめてみました。

読書まとめ

爆発的にヒットしたレーシックはなぜ激減したのか

  • 1998年ごろに登場して広まり始め、大ブームになったのがレーシック手術。
  • レーザーを当てることで角膜のカーブを変化させ、屈折率を調整する。
  • 短時間で手術できることもあり、メディアにも広く取り上げられ人気が高まり、手術件数は年々増加。
  • 施設間で料金の引き下げ競争が発生し、安全面を軽視する施設や、患者への説明を省く施設などが出てきた。
  • 2008年~2009年に東京のある眼科でレーシック手術に伴う集団感染事件が発生。
  • 消費者庁からレーシック手術に関する注意喚起が出され、レーシックは危険というイメージが定着してしまった。
  • この事件が大きなきっかけで、レーシックのブームは一気に去り、約45万件の年間手術件数は約5万件に落ち込んだ。(現在も変わっていない)
  • 現在では衛生管理などに十分配慮した状態でレーシック手術が行われている。
  • レーシック自体にも元に戻せない、ドライアイ、近視が戻るといったデメリットがある。
  • こうしたデメリットをカバーできる屈折矯正法がICL(眼内コンタクトレンズ)である。

新時代の屈折矯正法ICLとは

  • ICLはもともとは代表的な眼内コンタクトレンズの商品名の頭文字だが、現在では「眼内コンタクトレンズ」そのものの略称として定着している。

実は長い歴史を持っているICL

  • その背景には厚生労働省に認可を受けている眼内コンタクトレンズがICLのみ。
  • 実はICLの歴史が意外と古い。レーシックよりも歴史が長い
  • 最初のICLは1986年に開発されたと言われており、開発した医師とアメリカのスターサージカル社が開発したバージョン1のICLが1993年に登場した。
  • バージョンアップを繰り返し現在はバージョン5である。
  • 日本では2003年からICLの治験を開始し、2010年に厚生労働省に認可された

レンズの真ん中に穴をあけるという画期的な発明

  • 最近ICLが話題になっている理由は、ICLの中心部に小さな穴をあけた「ホールICL」が開発され、
    眼圧が上がる課題がクリアされたため、現在ではICLといえばホールICLを指すのが当たり前となっている。
  • ICLは現在世界80か国以上で承認を受けている。

ほかの眼内コンタクトレンズとどう違う?

  • IPCLはイギリスのメーカーから発売された眼内コンタクトレンズ。
    発売開始は2014年でICLより新しい。現在厚生労働省の認可を受けていない。
  • アイクリルはIPCLよりさらに新しい眼内コンタクトレンズで、スイスのメーカーから発売されている。
    現在厚生労働省の認可を受けていない。

ICLはいつ受けるべきか

  • 「もう少し待てば、さらに改善されて性能が良くなるのではないか」という期待を込めて待機する考えもあるが、ホールICLの登場がICLの史上、非常に大きな出来事であった。
  • ホールICLの登場で眼圧上昇やが白内障のリスクが減り、近視用のICLは一応の完成形となった。
    近視矯正のためのICL手術に関しては、現状で受けることを検討してよいというのが多くの眼科医の見解

ICL手術に向くのは一般に20~45歳

  • 近視進行が止まってから受けるのが良い。何歳で止まるかはっきりとした結論はないが、多くの眼科医が20歳以上目安にしている。
  • 50代後半以上になると白内障との関係が出てくる。白内障手術を受ける際はICLのレンズを取り出すことになる。

安心・安全に手術を行うためのICL認定制度

  • 執刀する術者のレベルを担保するために、販売元のスターサージカル社が取り決めた認定医制度
    それをクリアした認定しか手術を行えない。
  • 前提として眼科医専門医で、日本眼科学会が行う屈折矯正手術講習会と販売元の認定講習会を受講し、
    さらにインストラクター立ち合いのもとICL手術を行う。
  • 現在、認定は全国で約300人が在籍し、「ICL研究会」のHPで公開されている。
  • インストラクターは、認定の上位資格で、執刀数など一定の条件をクリアした術者。
  • ICL手術を受ける医療機関を選ぶときは、少なくともICL認定医が在籍しており、その医師が執刀する医療機関を選ぶことが大切

受けてはいけない「ワンデイICL」

  • ICLは手術そのものは日帰りで、短期間で行えるが、事前検査を正確に行うことが大切。
  • ICL手術を受ける医療機関は、しっかり日数をかけて必要な検査をしてくれることを条件に選ぶ

きちんと説明してくれる医療機関を選ぶ

  • ICLは6ジオプター以上の強度近視にお勧めできる屈折矯正法である。
  • 希望する患者には3ジオプター未満の軽度近視や15ジオプター超の最強度近視にも対応可能。
  • 老眼が進んだとき、軽度近視のままであれば裸眼で近くが見えるため、日常生活は意外と便利に過ごせる。
    ICL手術を受けると、老眼が進むと近くを見るのに老眼鏡が必要になる。
  • 最強度近視では緑内障、白内障、網膜隔離、といった目の病気のリスクが高く、
    多くの場合、ICLを取り出して治療を受けることになる。

ICLに適応するかどうかを判断するスクリーニング検査

  • 【角膜内皮細胞】
    一度失われると再生することは難しく加齢によって徐々に減る。
    コンタクトレンズの使用、目の手術(時間が長いと特に)によって減少が促される。
    3000個/㎟が正常、2000個/㎟を下回ると要注意。
  • 【前房深度】
    角膜の中央後面から水晶体の頂点までの距離が2.8mm以上ないと手術を行えない。
  • 【散瞳検査】
    ICL手術の時に散瞳が必要なため、散瞳薬を使って瞳孔が十分に開くかどうかを確認する。

あなどってはいけないICL術前検査

  • スクリーニングの結果、適性があることが分かったあと、サイズや度数などを調べる。
  • 事前に必要な期間コンタクトレンズを外しておく。
  • ソフトコンタクトレンズの場合3日から1週間、乱視付きはその倍程度、ハードの場合は1週間から3週間ほど外す。
  • その日の目の状態や体調などの影響も受けるため、複数回行うのが基本。
  • 【視力検査】
    Cの字に似た記号を使った一般的な視力検査。
  • 【屈折検査・散瞳】
    目に入った光がどのように屈折するかを調べることで、近視・遠視の度数と乱視の有無が分かる。
    気球などの絵が映り、機械が自動的にピントを合わせて測定する。
    度数を正確に測ろうとするとき、調節力でカバーしてしまうと正確な度数が測れないため、
    調節麻痺剤(瞳孔剤を兼ねた点眼薬)を使って検査をする。
    このときに改めて瞳孔径、瞳孔がどのぐらいの大きさまで開くかも調べる。
  • 【眼圧検査】
    眼球内部の圧を調べる。
    スクリーニング検査も調べるが、改めて測定する。
  • 【角膜形状解析・前房深度の検査】
    角膜の形状を調べる検査で、乱視の有無と程度、角膜がどの角度にゆがんでいるかを調べる。
    前眼部OCTを使った角膜形状解析を行うと、角膜のゆがみがカラーマップとして表示される。
    乱視のある人には特に重要な検査。
    同時に前房深度も測れるため、改めて測定する。
  • 【眼軸長】
    目の奥行きが長くなるのが近視の原因で、どれぐらいあるかを調べる。
    眼軸長の値がレンズ度数に直結はしないが、参考とする。
  • 【眼位・両眼視】
    眼位とは右目と左目の目の向きの位置関係のこと。
    正常ならものを見るとき、左右の眼は同じ方向を向く。斜視の有無と程度を調べる。
    両眼視とは左右両目で見ることによって、脳で生み出される立体感や距離感のある見え方のこと。
    斜視があると両眼視が出来なくなる場合がある。
  • 【優位眼】
    左右の目のうち、優先的に使っている目のこと。利き目。
    ICLはほとんどの場合は左右の目を同じ度数に揃えますが、場合によっては度数に若干の差をつける場合がある。
    老眼が始まる年代の人であれば、左右の度数に少し差をつけ、一方を遠目に、他方を近めに距離を合わせて、
    遠くも近くも見やすくなる。向き不向きがあるが、不快感がない人には便利な方法。
    希望する人にはコンタクトレンズなどでシュミレーションを行う。

度数決定は「自覚」が重要

  • 乱視の度数決定には、「自覚」による検査が重要となる
  • 赤と緑の背景に書かれた線を見て、どちらがクッキリ見えるかの検査をする。
    (レッドグリーンテスト)
  • 赤のバッグに書かれた線の方がクッキリ見える場合は矯正不足、
    緑のバッグに書かれた線の方がクッキリ見える場合は過矯正を意味する。
    過矯正の場合は、高い視力が出ていても、目が疲れた少なくなるので注意が必要。
  • 機械での他覚的な検査だけを信じてレンズを選ぶと、矯正不足や過矯正になりかねない。

サイズ決定のために必ず行う前眼部OCT検査

  • 前眼部OCTはレンズのサイズを自動的に出す機能もある。
  • ICLには4つのサイズがある。大き過ぎると水晶体が混濁する恐れや、眼圧上昇の危険性がある。
    小さ過ぎると角膜が濁るリスクが生じる。
  • 海外ではレーシック対ICLが、7対3でレーシックが多いのに対し、日本では逆の比率になっている。
    要因の一つにICLのサイズを自動的に表示してくれる前眼部OCTが日本で開発されたことがある。
  • スクリーニング検査のとき、既にその人に合うレンズのサイズは表示されており、
    だいたいの予測がついた状態から、詳しいサイズの検討を行う。

レンズのサイズ違いで交換・調整が必要な場合

  • ICLは何かあれば取り出せるものではありますが、入れる手術よりも取り出す手術のほうが大変で、
    眼科医としてできるだけ再手術は避けたいため、事前のサイズ決定には慎重を期しています。
  • 短時間の検査で簡単にサイズを決定するような医療機関には注意が必要

レンズの度数がずれた場合

  • サイズの不適合のほかに、レンズの度数ずれという問題が出ることがある。
    矯正が不足している低矯正と、過度に矯正してしまう過矯正の場合とがあります。
  • 近視が残ってしまうのが、低矯正。40代以降の老眼が始まる年代の人では、わざと完全に近視を矯正しない、計画的低矯正がある。

絶対避けたい過矯正

  • 視力2.0など近視を矯正しすぎると、遠視と同じ状態になります。
    遠視は遠くを遠くを見ると近くを見るときも目の調節力を使わないといけない状態
  • 検査の正確さや複数回行うなどの慎重さが大切なのはもちろん、
    術前検査を受ける前に、所定の期間、コンタクトレンズを外しておくことが大切。

ハロー現象が気になる場合

  • ハローとは夜、車のライトや街灯などを見ると、光の周囲に輪がかかったように見える現象。
    レンズの中で光が乱反射するために起こる現象で、どんな屈折矯正手術でも起こりえる。
  • ICLはレーシックよりはハローの出方が軽いといわれている。
  • ハローへの一番の対策は手術後にはそういう現象が起こると知っておくこと。
    手術の直後は強いと感じた人も、1カ月、2カ月、3か月と時間が経つと慣れる。
  • 術前から光に過敏な方は主治医に相談したほうがよい。

乱視矯正ICLの落とし穴

  • 近視用のICLでは、レンズが小さめで回転したとしても、問題なく使える。
    乱視の場合は、レンズの軸を合わせて使わなければならないので、回転するのは問題。
  • レンズが小さめなことが原因になっている場合もあるが、レンズがジャストサイズなのに、
    なぜか回転してしまうケースがある。原因は今のところ分かっていない。

十分な注意が必要な眼内炎

  • 特に目の中の手術なので、細菌感染のリスクを減らすために、室内の微粒子などを
    一定の規準以下にしたクリーンルームで手術することが必須とされている。
  • それでもまれに細菌感染が起こり、感染性眼内炎と呼ばれる状態になることがある。
    確率的には5000分の1程度と言われている。
  • 術後の検診をきちんと受けるとともに、目の痛み、視力低下などの症状が出たら、すぐ受診することが大切。

ICL手術後も近視の合併症には注意が必要

  • 近年、近視そのものにさまざまなリスクがあることが分かってきた。
    とくに強度近視があると白内障、緑内障、網膜剥離、黄斑疾患などを起こす危険性が高い。
  • ICLで近視そのものが治るわけではないので、定期健診などはきちんと受けたほうがよい。

Dr.柴のこだわり

  • 複数回検査をして、それらが矛盾していないかをきちんと調べるなど、基本に忠実にやっている。
  • ICL手術は術式として確立されているため、適切なトレーニングさえ受ければ安全に行える手術。
  • 手術と同様に重要なのが術前検査で、エラーを見落とさないように気を付けている。
    また、術後の管理も気を抜かないようにしている。
  • 度数などの決定には患者さんの背景や何を望んでいるかをよく聞きとって反映するよう心掛けている。
    全員がマックスの遠方視力が出ることを望んでいるわけではない。

Dr.奏のこだわり

  • 第一に、ICLが適当する患者さんに、適応するレンズを入れること。
  • 既にグレーゾーンの症例にICLを行う例も出始めている。
  • 未知数の部分が少ない、歴史的にいろいろなことが出尽くしているレンズを使う。
  • もう一つのこだわりが検査員の評価制度。ICLは術前検査の正確性が何より重要なので、それを担う検査員の育成に力を入れている。

Dr.大内のこだわり

  • 乱視矯正をするときに、意図した角度にレンズを固定するために、べリオンという機械を用いて、正確な位置決めをしている。

Dr.大島のこだわり

  • 術前検査にかなりの時間をかけて行っている。
  • 一つのこだわりとして、必ず5m視力計を使う。
    多くの眼科ではスペースをセーブするために1mの視力計を使っているが、
    散瞳剤で瞳孔を開いても、若い人は調節が入ってしまい、正確な結果が得にくくなる。
  • 5mの視力計を使うと本当に調節がかかっていない状態の視力が測れる。
    その視力と、普段瞳孔を開いていないときの視力を比べて誤差が出るようなら、
    再度検査を行う。2度の検査で誤差が出たら3回目を行い、矛盾しない度数が分かるまで繰り返す。
  • 検査には時間がかかり、1人の患者さんに1時間以上を要する。
    日を変えて複数回行うため、そんなに手術件数を増やすことができない。
  • ICLは何よりも検査が大事。手術手技そのものは、経験豊富な術者にとってはそれほど難しくない。
  • 検査を行う視能訓練士は、グループ独自の考課プログラムで、一定のレベルの検定をクリアした有能なものだけがICL検査を行う。

Dr.小島のこだわり

  • 術前の検査にこだわっている。検査は複数回行う。
  • 調節麻痺薬と5m視力計を用いて、本来どれぐらいの近視の度があるかを調べる。
    これらの検査は過矯正にしたいために重要。
  • 訓練されたスタッフが患者の要望を聞き取るとともに、ICLに関する情報提供を行う。

ICL手術を決断する前の6つのチェックポイント

①手術前の検査が複数回行われているか
人間の目は常に変動するため、複数回の検査をきちんとしてくれる医療機関を選ぶ。

②コンタクトレンズを十分な時間外して検査を受けたか
ソフトコンタクトレンズは1週間、ハードコンタクトレンズは3週間外し、術前検査を受ける。

③術前検査で調節麻痺検査を受けたか
正確な度数を測るためには、調節麻痺検査が必要

④コンタクトレンズでのシュミレーションを行ったか(45歳以上の場合)
割愛

⑤術者との信頼関係が持てるか
話しやすい医師を選ぶ

⑥術後の検査がきちんと受けられるか
一定期間おきの検査を指示し、きちんと診てくれる医療機関を選ぶ

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